
タントラとはなんぞや?⑧シャクティパータとディークシャ
前回の記事の最後で、デサイ氏が約200名のクンダリニーを引き上げた「集団シャクティパータ」に触れました。そこで今回は、シャクティパータについて、またディークシャとの関係について書いていきます。
前回の記事はこちら↓
●シャクティパータ(śaktipāta)とは?
śakti(シャクティ:力、女神)
pāta(パータ:落下、降下)
「力の降下」すなわち神のエネルギーが魂に注がれる出来事。師から弟子へと、意図的な授与(ディークシャ)によっても起こるが、 意図的ではなくてもカルマや魂の熟成度により、神による自然発生的、または天啓的に起こることもある。(夢・ビジョン・瞬間的な触発など)
ディークシャに関しての記事はコチラ↓
シャクティパータ(英語圏ではシャクティパット)は、伝統的な儀礼(ディークシャ)でも起こることはありますが、多くの場合、外的儀礼にとどまり、シャクティ(霊的エネルギー)の降下を伴わないことも多く見られます。
伝統的な見解では、真の霊的進化は「シャクティパータの強度」によって決まるともされ、ディークシャは、それを受け取る準備が整った者においてのみ、シャクティパータとして機能します。
●シャクティパータの主要パターン
神の力(シャクティ)の降下にはいくつかの典型的な様式があります
1. 触れる(スパルシャ)師が弟子の頭・胸・背中などに手を触れる行為で最も有名。クンダリニーが起動する例多数。
2. 視線(ドリシュティ)師がまなざしで弟子を見つめる「目を通してエネルギーが流れる」とされる。
3. 言葉・マントラ(ヴァーク·マントラ)師が特定のマントラや言葉を唱える/囁く真言やヴァーク(vāk)の発動により内的エネルギーが活性化。
4. 思念・祈念(サンカルパ)師が意志・心念だけで行う身体的な接触なしで、遠方でも効果が現れる。
5. 儀礼(ディークシャ·クリヤー)火供(homa)、水の滴下、ヤントラ・花の使用などシャクティを儀礼に封じて媒介として伝える方式。
6. 夢・幻視(スヴァプナ)師が夢や瞑想中に現れ、エネルギーを注ぐ実際の出会いを伴わず、魂の層で作用する高次方式。
7. 書・図像・聖なる場所(ダルシャナ·ヴァストゥ)書物・ヤントラ・聖地などを通じて発動『ヨーガ・ヴァーシシュタ』では書物自体がシャクティを帯びると説かれる。
8. 集団場の形成(クシェートラ·ニルマーナ)シャクティを持つ場(空間)に入る。デサイ氏のような導師が全体場を形成し、多数に作用。
9. 自然発生(アヌグラハ)神が直接、準備された魂にエネルギーを降ろすグルを介さず神自らが行う、恩寵。

デサイ氏のように200人規模のクンダリニー覚醒を引き起こすには、極めて強力な霊的場の形成能力が必要です。しかし、その力の発動は必ずしも人格の成熟や完成を意味しない、という見解もまた伝統的に認められています。
●不完全な師、偽物からの伝達
シャクティに利己的な意図が混ざると、エネルギーの動きが強制的・暴力的になり、結果として誤ったチャクラの活性化や精神錯乱、依存状態が起こる可能性もあります。つまり、「力」は伝わっても「智慧」や「方向性」が歪められることがあるのです。結果として、変容は起こっても混乱を伴いやすく、統合や成就に至らないことが多い点には注意が必要です。
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ॐ श्रीमातृभ्यः नमः
om śrī-mātṛbhyaḥ namaḥ